ぷれす通信

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読んだら書きたくなりました vol.120

『かみさまは中学1年生』

すみれ サンマーク出版

生まれる前の記憶を持ち、神様、天使、お腹の中の赤ちゃんと会話ができるすみれちゃん。本書は彼女が前作『かみさまは小学5年生』では伝えきれなかったことが綴られています。今回は親と赤ちゃんの関係性が主な内容で、空の上の世界の不思議に再び触れつつ、母子の絆や赤ちゃんとして生まれてくる人間の言動の意味にすみれちゃんの視点で迫っていきます。お腹の中に誕生してからではなく、出産してからを誕生とする世間的な価値観にもったいなさを感じるという話については感銘を受け、胎内記憶を持っている子が存在することは統計的に認められているけれど実際どうなんだろう、人間の誕生の基準って何だろうとモヤモヤしていただけに納得しました。笑えない大人に笑い方を教えるために笑い、泣けない大人に泣き方を教えるために泣くことが子どもにはあるという子育ての両義性を気づかせてくれる話も含め、前作同様に意義深い読書体験でした。(くろ)

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『ほんやのポンチョ』

にしのあきひろ 幻冬舎

生業である書店の経営よりも町での人助けに精を出すポンチョ。閑古鳥が鳴く店内で売り物の本を読んでは折り目をつけたりメモを書き込んだりして過ごす彼の前に、ある日一人の客がその「しるし本」を買い求めに訪れる。本来なら売れるはずがないものの、ポンチョの思いの籠もったその「しるし本」は次第に町の人の注目を集め、書店は繁盛していく。お笑い芸人という枠を超えて多彩な活動をされている西野亮廣さん。本書は来年12月に映画化が予定されている『えんとつ町のプペル』に次いで刊行された絵本です。題材となる「しるし本」は、作品を読むことと並行して前の持ち主がその時、一文一文に対して頭に浮かんだ思いや考えを知ることができるのが魅力の一つ。それが目当ての人によるものであればいっそう惹かれるでしょうね。中古書は新品に近い状態ほど優れているという思い込みのもと、中古書店で本を購入した際、前の持ち主の書き込みなどがあればこれまで問答無用で返品や処分を図っていたのですが、今後は一度立ち止まろうと思います。従来的な価値観も享受しつつ、前の持ち主が作品と真摯に向き合った形跡に価値を見出す。コペルニクス的転回をもたらす大人も楽しめる絵本でした。(もん)

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