ぷれす通信

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読んだら書きたくなりました vol.107

『見るだけで勝手に記憶力がよくなるドリル』

池田義博 サンマーク出版

「2019年度 記憶力日本選手権大会」優勝者にして日本人初「世界記憶力グランドマスター」という、説得力ある肩書きをお持ちの池田義博さんが書かれたものです。感情に訴える出来事は記憶に残りやすいと聞いたことがありますし、実際の経験から興味・関心があることは比較的簡単に覚えられると感じていますが、自分にとって訴求力を感じないことを記憶するにはどうすればいいのか。本書で池田さんはその方法として探知・分類・照合・イメージ・関連の「ひらめきセンサー」を活用することを提案し、それらセンサーの仕組みをわかりやすい説明でインプットする場と、合計60問のドリルによってアウトプットする場を用意してくれています。「誰しも、もともと素晴らしい記憶力をもっています。しかし脳の使い方をよく知らないために本来の力を引き出せていないことが多いのです」と池田さんはいいます。「ひらめきセンサー」を駆使してドリルを楽しく解き進めることで、その効果を実感するとともに、記憶のきっかけとなる「インパクト」は、自らの思考法自体によっても意図的に生み出せるのだという気付きを得ました。「分類センサー」による特定の名詞の上位概念・下位概念の連想など、本書で得た学びの「記憶」を糧に早速実生活でも「ひらめきセンサー」を活用していくつもりですが、たとえ簡単に記憶できなくても気にせず、楽しみながら臨むことを優先したいと思います。それが結果、記憶力を高めることにつながるのですから。(くろ)

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『アーロン収容所』

会田雄次 中公文庫

大東亜戦争の名のもとにビルマ戦線に送られ、部隊壊滅寸前で終戦を迎えたものの、現地で約2年間イギリス軍の捕虜として拘留された生活の記録です。シベリアのように思想的圧力はなかったものの、糞尿処理や屍体の掘り起こしなどの労務を強いられ、飼育物のように扱われて「イギリス人を全部この地上から消してしまったら、世界中がどんなにすっきりするだろう」と激しい怒りを抱いた著者は、一方で、大学で歴史を学んでいたことから文化の違いに目を向け、時にイギリス人の姿勢を褒め称えもします。日本、イギリス、インド、ビルマと収容所で関わったそれぞれの国に対する考察は鋭く、例えば戦時の日本が捕虜をやみくもに行進させて多くの死者を出したのは、西洋のように家畜を移動させる経験がなかったのも理由の一つであり、また血を見て逆上して残忍な行為に出たのも、日常的に屠畜作業のない文化的背景によるものなのではないかと述べています。本書のユニークな点は、収容所の屈辱的な日々を赤裸々にしつつも、面白おかしいエピソード(いかにイギリス軍のモノを盗み出すか等)を交えていることです。それが故に「お涙頂戴」に陥ることなく、喜怒哀楽をもって読み進められます。「戦後○年」というフレーズが、記号化しつつある昨今。改めて戦争の歴史や日本人とは何かについて考えてみるのに適した一冊です。(もん)

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