ぷれす通信

communication

読んだら書きたくなりました vol.100

『人生100年時代の稼ぎ方』

勝間和代/久保明彦/和田裕美 アチーブメント出版

2018年にイベントで登壇した3名の講座を書籍化したものが本書です。もちろん取材、補足とアップデートされたうえでの新刊です。「貯金2000万円が必要」などと報じられて問題になりましたが、人生100年時代を迎えるにあたり、従来の「老後は退職金と年金でのんびり」というモデルが崩壊した証拠でしょう。実際、支給される年金だけでは暮らしていけないし、全くもらえなくなるだろうと思っている人も多いのでは? かといって2000万円を今から貯金しようにも、そう易々と貯められるものではありません。ではどうしたらいいのか!? その解決策やヒントがこの一冊に詰まっています。特筆すべきは、勝間和代さん(お金のプロ)、久保明彦さん(キャリアのプロ)、和田裕美さん(人付き合いのプロ)といった3名の叡智が集結している点です。各人の経験をもとに、意識改革やとるべきアクションについて、数ページごとに代わりばんこで語られます。特に第3章「100年稼ぐためにやるべきこと」では、「好かれる力」を身につけて突き抜ける人間になることや、再就職のために武器となる自らのブランドをつくりあげること、過去の栄光やプライドにすがらず未来に賭けるといった内容が、12項目にわたって具体的に記されています。人生100年時代に向けて、生活に必要なお金を「稼ぐ」ために自分をデザインする必要性を認識するようになると思いますよ。(もん)

『情事の終り』

グレアム・グリーン 上岡信雄 訳 新潮文庫

1939年、役人を主人公に小説を書きあげるべく、モデルとしてヘンリーとサラのマイルズ夫妻と知り合った作家のモーリス・ベンドリックスは、やがてサラと熱烈な恋に落ちる。ところが、第二次世界大戦のさなか逢瀬を重ねていたある夜、ドイツ軍のV1ミサイルが炸裂し、2人の間に決定的な決裂が生じ――。神という存在を前に、「愛する」とはどういうことかを描いた本作は、惚れた腫れたの恋愛小説にとどまらず、哲学的な意味も大きくてやや難しい面もあります。しかし、感情の入り乱れや人間の不完全さをまざまざと見せつけられて、読んだ分しっかり腹おちする作品です。夫妻との別離から数年後、ヘンリーがサラの不貞を疑い憔悴していることを知り、彼を気づかうそぶりで実際は自分のために探偵を雇い、サラの心中を探るというベンドリックスの嫉妬と執念。サラがベンドリックスの元を去るきっかけとなった、爆撃の夜にかわした約束とその相手とは。ミステリータッチで進み、途中で日記形式を取り入れている点は、緩急を使い分けたグリーンの腕の見せ所と言ってよいでしょう。愛に付きまとう様々な心の揺れ動きと、なんとも言えない読後感は名作の名にふさわしいものです。(かつ)