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ぷれす通信

2015年1月号

こちら編集部です 翻訳出版の長い旅路

翻訳出版の世界で最近、「コープロ」(co-production:共同製作)という形態が増えています。図鑑など、写真や図版が豊富なビジュアル本に多く採用されている方法ですが、デザインやレイアウトは基本的に原書を踏襲してテキストの部分だけを各言語に翻訳し、すべての言語版の印刷・製本を1カ所(主に中国)で同時に行うという仕組みです。基本的に原書の出版社が全体の印刷一式を取り仕切るため、品質が一定に保たれる、印刷費が抑えられる、といったメリットがあります。
 もちろんデメリットもあります。各言語版の足並みをそろえて印刷するため、翻訳作業も全体のスケジュールに合わせて進めなければなりません。ものによりますが、印刷用データを現地に送ってから本として完成するまで数カ月かかることもあります。また海外での作業となると思わぬトラブルが起きて、さらに納品が遅れる可能性も。もし売れ行きが予想以上に好調でも、増刷するのに時間がかかりすぎて売り時を逃してしまうこともあるとか。コープロが版権契約の条件となっている場合、このようにさまざまな制約を受けるのです。
 ぷれすが翻訳を手がけた『ヒトラーの宣伝兵器―プロパガンダ誌《シグナル》と第2次世界大戦―』(悠書館、2月刊予定)も、そのコープロで進行しています。書名のとおりナチスのプロパガンダ誌《シグナル》を紹介・分析する内容で、当時の誌面をそのまま再録した部分が大半を占める資料的価値の高い一冊です。《シグナル》は写真やイラスト、地図などを多用したグラフ誌なので、まさにコープロ向きの書籍といえましょう。
 ただ、原書の再録部分は非常に細かい文字で埋め尽くされており、日本語に訳すと文字数が大幅に増えて収まりきらない箇所が頻出してしまいました。写真や図版のレイアウト変更ができないために、訳文を大胆に削ったり、級数を下げたり、行間を詰めたり……。なんとか形を整えて、昨年10月に中国にある印刷所へデータを送りました。あとは印刷・製本の完了→船便で東京港に入港→通関手続きを経て倉庫へ、という長い旅路の無事を祈るばかりです。(な)

この一冊!『私の国語教室』

<h3>2015年1月号</h3>
『私の国語教室』

福田恒存 著
文春文庫/360ページ
ISBN-10: 4167258064
ISBN-13: 978-4167258061
価格 630円(税別)

「かなづかい」と「かなづかひ」。かな表記として正しいのはどちらでしょうか。
 実はこれ、正誤の問題ではなく、どちらも正しいのです。前者は「現代かなづかい」、後者は「歴史的かなづかひ」です。
このような使い分けが生じたのは戦後のこと。1946(昭和21)年に国語審議会の答申に基づき、「現代かなづかい」が「当用漢字表」と併せて内閣告示・内閣訓令として公布されたことに始まります。「現代かなづかい」は、同じ発音はいつも同じかなで書き表し、一つのかなはいつも同じ読み方をする「一音一字、一字一音の表音主義を原則」とする表記法として制定され、この公布を機に、教育界や官公庁の文書などで広く使用されることになりました。
これに真っ向から反対の論陣を張ったのが、本書の著者、福田恆存(ふくだつねあり)です。評論家・劇作家・翻訳者としても知られた福田は、「現代かなづかい」が「歴史的かなづかひ」に対し、いかに不合理であるかを徹底的に論証しました。「現代かなづかい」が表記法に多くの例外を設けるなど矛盾していることを実例を挙げて指摘し(例えば、表音主義では「私は」は「私わ」と表記するべきだが、許容されている等)、「歴史的かなづかひ」にこそ合理性があることを主張しています。そして、「『現代かなづかい』の實際に見られる幾多の矛盾は、…《中略》…『表記法は音にではなく、語に隨ふべし』といふ全く異種の原則を導入したことから起つたものなのだ」と断じています。こうした論証を一冊にまとめた本書を読むと、日本語を文化的な側面から見た場合、「歴史的かなづかひこそ、最も國語音韻に適した安定的な表音かなづかひである」ことが明快になってきます。
「現代かなづかい」は、公布されてから既に70年近くとなり、現在の日本社会に定着しているように見えます。が、それよりも長い歳月、「歴史的かなづかひ」は日本人に用いられてきたのです。本書によって、その世界の奥深さを知っていただければと思います。(T)

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