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ぷれす通信

2013年3月号

デッドゾーン 用語統一ルールの違いに学ぶ

今回は個人的な体験をもとに書こうと思います。
 駆け出しのころ、一週間日替わりで5つの雑誌を校正したことがありました。
 各誌、用語統一ルールの違いがあり、前日に担当したルールを引きずって「あっ、『子ども』は違う雑誌だった! 『子供』に直さなきゃ!」というようなヒヤリとした思いを幾度となくしたことがあります。
 「日頃」と「日ごろ」や「美味しい」と「おいしい」、「嬉しい」と「うれしい」……等々、いくつもの違いがあり、それぞれの用語表をめくりながら校正をしました。
 とはいえ用語統一にじっくり向き合うほど時間の余裕もないので、どうしてもすべてを拾いきることはできず、悔しい思いをしたものです。
 いまではどんなゲラを手にしても、臆することも見落としも、かなり少なくなりました。
 なぜだと思いますか?
 複数の用語表と向き合う日々を送るうちに、どんな言葉に“ゆれ”が生じやすいのかがわかるようになってきたからです。例えば「素材」「特性」「家庭」「事情」という表記をひらくことは稀でしょうが、「強い」「生かす」「実に」「難しい」などは、ひらがなで表記することもあります。また、送り仮名の付け方では、本則・例外を基本としつつも特定の用語だけは許容に従う場合(「行う」→「行なう」、「断る」→「断わる」、「賜る」→「賜わる」など)もあるのです。
 つまり、表記の“ゆれ”の傾向がわかり、どの用語に気を付けるべきか、取捨選択能力が身についたということです。
 用語統一の感覚は、雑誌や商業印刷物、書籍を問わず応用がききますから、仕事のみならず、暮らしのなかで用語を意識し、勘所を押さえることをおすすめします。
 統一にかける時間を短縮できれば、誤字脱字のチェックや調べに時間を割り振ることができ、仕事の精度が高まるという好結果をもたらすからです。(M)

この一冊!『振仮名の歴史』

『振仮名の歴史』

振仮名の歴史
今野真二 著
集英社新書(2009/7)
新書判/224ページ
ISBN 978-4-08-720501-5
価格 735円(税込)

日常的に慣れ親しんでいる「振仮名」。振仮名といえば、漢字の「読み」をあらわしたもの、と思うでしょう? 振仮名の役割はそれだけではありません。振仮名は、読みだけでなく「表現」の工夫や、漢語や外国語、方言の「翻訳」までこなす、日本語を支える縁の下の力持ちなのです。
 本書では、振仮名の始まりとされる平安時代から現代に至るまで、『日本書紀』の読み下し文から夏目漱石の直筆原稿、サザンオールスターズの歌詞、漫画のフキダシ等を例に挙げて、振仮名の変遷を辿っています。
 サザンオールスターズの歌詞に、「瞬間」に「とき」と振仮名を振ったものがあります。「瞬間」に「しゅんかん」と振仮名を振るのは「読み」ですが、「とき」と振るのは「表現としての振仮名」です。わざわざ「瞬間」に振仮名を振るのではなくそのまま「とき」あるいは「時」と書けばよいのに、「変わった表現がしたい!」という思いから「瞬間」と書き、それを「しゅんかん」と読ませないために、さらに「とき」という言葉を使いたいのだということを示すために「とき」と振った――このような経緯が読み取れます。
 「翻訳としての振仮名」も見てみましょう。井上ひさし『吉里吉里人』を見ると、「妾」に「わだす」、「時々」に「とぎどぎ」、「一流」に「えづるー」、「美空ひばり」に「めそらいばり」と振仮名が振ってあります。これは、共通語の吉里吉里語訳を振仮名を使ってあらわしたものです。また、サザンオールスターズの歌詞には「あるがままに」に「let it be」と振仮名を振った例もあります。
 日本語には「正書法」がなく、また文章を書くのに漢字、平仮名、片仮名、アルファベットなど多様な文字を使うことができます。そのことが、振仮名を使った表現に多彩さをもたらすことになりました。「正書法」がないということは、書き方に多くの選択肢があるということであって、振仮名を使った豊かな表現を生み出す要因にもなっています。
 本書を読み、振仮名の豊かさに触れてください。(S)

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