ぷれす通信

communication

2010年10月号

デッドゾーン 「ゆく」「いく」、どっちを使う?

まあ、どちらでもいい。……のですが、「行く」にルビを振ろうとすると、迷ってしまうこともあるのでは? まさに、「日本人の知らない日本語」の一つですね。

そこでいろいろとあたってみたのですが、あえて古さ=オリジナルを求めるならば、「ゆく」とする傾向ら・し・き・ものがあるようです。たとえば、「図書」2003年7月号(岩波書店)からの孫引きですが、『岩波日本語使い方考え方辞典』(北原保雄監修)は、「『行く』が『時間が過ぎ去って行くこと』を意味するときや『死亡する』意である『逝く』は、『ゆく』」だが、「『いく』『ゆく』の両方とも上代から使われてきた語形」で「文語的な表現やある程度固定化した表現では『ゆく』の方が自然なかたちに落ち着いている」といいます。また『日本文法大辞典』(松村明編、明治書院)には、やはり「上代から『いく』『ゆく』の両形が用いられて」いて、「両者の間にははっきりした意味の違いはない」ものの、「『いく』の方が新しい形と思われる。用法としては、『ゆく』には音便形『ゆって』がない」と、『ゆく』がより古い表現であることを示唆しています。

以前「この一冊!」で紹介した『例解同訓異字用法辞典』(浅田秀子、東京堂出版)も、こう記述しています。「『ゆく』は『いく』の標準形で、くだけた日常会話ではもっぱら『いく』のほうを使うが、ちょっと文学的な表現をしたい場合や、比喩的な意味で言う場合には『ゆく』を使う。ただし、終止形以外の『ゆかない・ゆきます・ゆけば・ゆけ』などはあまり使われない」。

どうです、参考になりました? ちなみに『例解~』によれば、性描写の時は「しばしば『イク』」と書くそうです、ハイ。

お役立ちサイト

『NHK「戦争証言アーカイブス」』

http://www.nhk.or.jp/shogenarchives/