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ぷれす通信

2012年6月号

デッドゾ-ン 印刷字体と筆写の違い

皆さん、日頃の入朱やエンピツ出しではどんな字を書いていますか?――印刷字体と手書きの筆写の字体は違う、という意識を持っていますか?
字体のはなし――超「漢字論」――
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今回のデッドゾーンは財前 謙『字体のはなし――超「漢字論」――』(明治書院)から。

わたしたちが目にしている印刷字体とふだん手で書いている筆写の字体は「根本的に別物」なのだそうです。印刷字体(ここでは明朝体)は手で書くことを前提としない、あくまで工業デザイン上の都合から設計されています。シンニュウの形を比べればわかりやすいかと思います。

両者の字体が違うのは当たり前のように思うかもしれませんが、学校で漢字を教わったとき、教科書の活字と同じように書かなければマルをもらえなかった経験はありませんか? 明朝体は別として、手書きの形を考慮した教科書体であっても筆写との相違があります。

「薬」という字がありますね。この字の第15、16画は、筆写では活字のように払わなくてもいいのです。払わないで、テンのように書いて止める――筆写ではマルなのです。

牛丼で知られる吉野家の「吉」の正しい表記は「土」に「口」。同社ロゴもそうなっていますね。筆写ではそのほうが速書きの際にバランスを整えやすく、それが本来の形らしいのです。

糸へんは、第1~3画までは「糸」と同じで、第4~6画は点を3つ並べた形が筆写では歴史的に当然のことだったそうで、こちらが正しいのだそうです。

シンニュウは、筆写の楷書の場合、基本的に点が1つというのが1000年以上昔からの常識とのこと…。このように、活字と筆写ではずいぶん違いがあるのです。

校正者は校正の対象が印刷文字ですから、活字の字体に倣って書き込みをする必要があります。辞典やゲラの字体をよく見て、誤りなく書きましょう。つい自分の書き癖が出ていませんか? 字体の一点一画に注意を払った書き込みを心がけたいものです。(S)

この一冊!『日本語の難問』

『日本語の難問』

『日本語の難問』
宮腰 賢 著
宝島社新書(2011/10)
223ページ/新書判
ISBN 978-4-7966-8636-5
735円(税込)

本書は、日本語の文法や言葉の使い分けなどの「難問」に答えたQ&A本です。すべてのQ&Aが見開きで完結しているため、いつでも気軽に、好きなところから読むことができます。

本書に集められた質問は、タイトルに「難問」とあるだけに、解説をさっと読んでわかるケースは稀でしょう。解説には専門用語もちらほら。日本語学の素養がなければ読み解けないこともしばしばです。見開きという限られたスペースのためか、各専門用語についての解説まではされていません。そこは必要に応じて自分で調べなければならないでしょう。そのようにわからない事柄が含まれていても、本書を手に取る価値は十分あります。時間の10分は「ジュップン」?「ジップン」? 接頭辞の「お」「ご」「み」はどんな語につく? 「お食べになる」と言えないのはどうして? 等々、興味をそそられる難問が96問、私たちを待っています。

時間の10分は「ジュップン」「ジップン」のどちらが正しいかというと…本来の日本語は「ジップン」だが最近は「ジュップン」と言う人が増えている、と述べたあとにムズカシイ説明が続き、最後に今のところ「ジュッ」は公式には認められていないが平成22年告示の「常用漢字表」の備考欄に〈「ジュッ」とも。〉と付記された旨添え書きがあります…。スミマセン、恥ずかしながら全く歯が立ちませんでした。

なのになぜ本書を推すかというと、限られたスペースの中でぎりぎりまで丁寧に答えようとする姿勢と、わからないことは「わからない」とはっきり答えていることがその理由。著者の質問者への、さらには学問に対する飾らない誠実さが文面から感じとれるのです。ほかには、解説中の「日本人は濁点をきらう傾向がある」「場面依存性の強い日本語」など、日本語の特徴に触れたひと言が◎。理解を助けるための文例として、古典から漱石や鷗外まで多種多様な作品が引用されています。

本書を入り口に、日本語学の世界へ分け入ってみるのもアリかと思います。日本語の謎へ、いざ!

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