ぷれす通信

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2012年10月号

デッドゾーン マンガ・イラストのチェック

マンガの校正で気を付けなければならないことのひとつに、絵のチェックがあります。

 

ネーム(ふきだし等の文字)は「校正者の目」でもって作業したものの、絵は通常の読者の目で見てしまい、あとになって思わぬ結果に……などと冷や汗をかくことのないようにしたいものです。

 

前後のコマでキャラクターの髪型や服の柄が変わってはいないか、ピアスや指輪といったアクセサリーの有無・整合は大丈夫か、ノドに絵や描き文字がかかっていないか、組版作業で起こりがちな絵柄の欠けは起きていないか……等々。

 

また、人物を見るときには、指の数や瞳の位置といったディテールに目を光らせることも大事です。言語表現のみならず、描かれたものによっても読者を傷つける表現となりえてしまうこともあるからです。

 

つまり「絵の素読み」もおろそかにはできないということ。

 

マンガの校正は自分に関係ないなぁ、と思った方もいるかもしれませんが、実用書に見られるイラストも同様のアプローチが必要です。

 

クライアントによっては、絵の確認を第一優先作業として、要修正箇所をファクスやPDFで教えてほしい、といった要望もあります。

 

「文字を見る目」「絵を見る目」と意識を変えてチェックをする。

 

視点のチャンネルを切りかえるスキルも、校正者に欠かせない条件です。(y)

この一冊!『私の好きなお国ことば』

この一冊!『私の好きなお国ことば』

『私の好きなお国ことば』

私の好きなお国ことば

小学館辞典編集部 編

小学館(2007/4)

210ページ/四六判

ISBN 978-4-09-387709-1

1,470円(税込)

 


皆さんの出身はどこですか? 今でも覚えている、なつかしいことば、好きなお国ことばは何ですか?

 

本書は、各界で活躍している49名による方言エッセイ集です。思い出深いことばや心の支えとなったことばが愛情たっぷりに綴られています。北海道の「おばんでした」に始まり沖縄の「マーンカイガ」まで、巻末の方言索引を数えると約180もの方言が紹介されています。

 

執筆陣は北から舞の海秀平、みなみらんぼう、田部井淳子、林家たい平、立川志の輔、道場六三郎、冨士眞奈美、池内紀、八代亜紀……錚々たる顔ぶれです。

 

おもしろいと思ったのは、方言そのものよりも、東京近郊の県にみられる特徴でした。共通語を耳で聞いてとくに違和感がないために自分たちの方言に気づかず、自分たちも例えばNHKのアナウンサーのようなことばを話していると大学進学や就職等で上京するまで気づかなかった、というような経験談があったのです。

 

栃木県宇都宮市出身の作家は、本人にはそのつもりはないのに、アクセントなどの微妙な言い回しで「なぜかことに目立って」しまったそうです。「あまりにも微妙なイントネーションの違いなので、本人としても直すに直せない」

 

神奈川県横須賀出身のアナウンサーは、原稿を読んでいるぶんにはアクセントの狂いなどはほとんどなかったそうですが、原稿なしで自由にしゃべるときに「横須賀や三浦半島の方言がボロボロでてくる」と書いています。指摘されるまで、それらが方言だとは気づかなかったそうです。

 

方言は、ちょっとした場所や時間(時代と言ったほうがよいか?)で違いが出てきます。その土地に暮らした者でなければわからないことばがたくさんあります。同じ県内でも川を一本越えたら、峠をひとつ越えたら、もうそこは別世界。知らないことばが私たちを出迎えてくれるのです。

 

各地の方言の魅力、懐の深さを教えてくれる本です。