ぷれす通信

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読んだら書きたくなりました vol.124

『だっしゅつせよ! ゾンビタウン』

カヤマタイガ 文響社

主人公は君! 迷路に挑戦したり、アイテムを探したりしながら読み進める、参加型の絵本です。運悪くゾンビタウンに迷い込んでしまった子どもたち(読者)が、謎の案内人ビエールの導きでゾンビの世界からの脱出を試みるというストーリー。無事脱出できた後には、「おまけのさがしもの」が用意されていて、飼い主から逃げ出したゾンビ犬や絵のアイディアに悩んでいるアーティストゾンビ、家出中の子どもゾンビなど、ゾンビタウンでそれぞれの生活を送っているゾンビたちを探し出すミッションにチャレンジできます。ゾンビタウンでは、あちこちでさまざまなトラブルが起こっているので、読み込むほどに新しい発見があって、何度も読み返してしまいます。小さい子って、こういう色々な要素を詰め込んで描きこまれた絵本が大好きですよね。集中して隅々まで読んでいる様子には感心させられます。「おまけのさがしもの」は大人でもけっこう難しいものもあるので、親子そろって、ポップでカラフルな街とかわいいゾンビの世界に引き込まれること請け合いです。(もん)

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『ことわざの論理』

外山滋比古 東書選書

抜粋したことわざを通して人間の普遍性を探究しようと試みているのが本書です。学術的で堅苦しい内容かと思えば予想に反して中身は易しくエッセイ風。“情けは人のためならず”を人のためにならない、と誤解する若い人たちに対して、「このことわざは、あまり感心しない思想をはらんでいる。人に親切にするのは、実はわが身かわいさの間接的行為である、と言っている。こういうけしからん気持で情をかけるのは不純である。若い人の純情がそれに反発するのはむしろほほえましいではないか」と著者は鷹揚で、一般的な解釈を鵜呑みにすることなく考えを綴っているので好感が持てます。“傍目八目”だから“人のふりみてわがふり直せ”だと関連づけたり、矛盾に映ることわざの共存状況を立体交叉になっていれば問題ないと車の交通に喩えたり。ユーモアを交えて楽しませつつ、多様な表現方法でことわざの論理の核心を突いて読者の知的好奇心を満たす。ウィットに富んだ文章とはこういうもののことを言うのでしょう。“終わりよければすべてよし”の項をもって締めくくられるのもまた粋な計らいです。

複雑な人間社会を如実に投影することわざ。浅はかな解釈のもとに使ってきたことが恥ずかしいですが、それは“後の祭り”。本書を機に脈々と受け継がれてきたこの人類の英知を人生の糧にすべく、折に触れてことわざから学びを得ようと思います。勿論、“論語読みの論語知らず”とならないよう気をつけて。(かつ)