読んだら書きたくなりました vol.112
『+1cmLOVE たった1cmの差があなたの愛をがらりと変える』
キム・ウンジュ(著)ヤン・ヒョンジョン(イラスト)カン・バンファ(訳) 文響社
本国韓国はもちろんアメリカや日本でもヒットしたメッセージ本『+1cm』の続編になります。今作のテーマはタイトルにLOVEとある通り「愛」、甘かったり辛かったりする102のメッセージが収録されています。この本の素敵なところは、「先月は144ページのメッセージが響くなと思ったけど、今日は94ページのメッセージが刺さるわ」というように、本を開く時の気分やその時置かれている状況によって琴線に触れるページが変わるところ。片思いの時、ラブラブの時、喧嘩中、さよならした時……、この本のページをめくってみてください。前に読んだ時には気づかなかった深い意味に気づいて、勇気づけられたり慰められたりすると思います。折に触れて読み返したい一冊です。ページにちょっとしたしかけもあり、手繰る楽しさもありますよ。(くろ)
『言葉と歩く日記』
多和田葉子 岩波新書
「言葉と歩く」と銘打って仄めかしているように、日記の体裁をとりながら多和田さん独自の言語論を記した作品です。難しい学術的な内容ではなく言葉遣いはいたって平易。日独二か国語を用いる視点から、具体例をもって自身の言葉への解釈を綴っています。例えば『雲をつかむ話』(講談社)の題名は、彼女が慣用句の持つ常識を押しつけてくるような力に反抗してつけたタイトルだそうです。慣用句、文法や母語といった、日頃活用する言語ツールを観察し、各々の未だ知らぬ可能性を示唆してくれるセンテンスの数々。意図して、又、理解して使っていると思っていた言葉に実はまだこんなにも無意識の要素や意味の含蓄があったのか! と驚くことしばしばでした。型にはめた言葉の使用は、自身の思考までも型にはめてしまうおそれがある。そう教えられた気がします。言葉を惰性で使わず、もっと自分のSprachgefuhl(≒言語感覚)を尊重し、主観的な物差しで言葉を選び、表現していきたいと思いました。言葉の奥深さを教えてくれる秀作です。(もん)