ぷれす通信

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読んだら書きたくなりました vol.34

『半径66センチのしあわせ』

堀川 波 サンマーク出版

当たり前に身近にあることは、意識したり顧みたりすることがなくなりますが、この本の詩はそんな当たり前のモノやコトを鮮やかによみがえらせてくれる力があります。なかでも、わたしが一番お気に入りなのが「くり返しの毎日」という一編です。タイトルだけでは、代わり映えのない日常といったイメージが湧くかもしれませんが、とんでもない。少ない言葉で綴られたこの詩には、はっと目を覚ましてくれるような効力があります。詩集はあまり手に取る機会がないわたしですが、まずカバーのイラストに目を引かれました。両手に載るくらいの小ぶりなサイズも可愛くて、贈り物にしても大袈裟にならなくていいなと思います。(いく)

『東京ヤミ市酒場』

フリート横田 京阪神エルマガジン社

首都圏13カ所にスポットを当て、終戦によって現れた「ヤミ市」の成り立ちや変遷を記しています。著者は街歩き系の執筆や編集も手がけるアラフォー男性。その翳に惹かれてヤミ市酒場を飲み歩き、100人以上もの方から話を聞いて、一冊の本にまとめています。終戦直後の状況など、空襲を生き延び、または海外から命からがら引き揚げてきたとはいえ、焼け野原と化した地で生きていくのは本当に大変だったのだなと、しみじみすることも。多くのヤミ市が撤去や移転、そして消滅していくなか、いまも続いている横丁や店があるとはすごいこと。タウン誌で取り上げられる渋谷や吉祥寺や西荻窪のあの店やあの場所も、もとはヤミ市だったのか!とびっくり。外飲みが苦手な私は毎晩自宅で飲みながら、ヤミ市酒場の雰囲気に酔いました。飲み歩きが好きな方は、気になったヤミ市酒場に足を運んでみてはいかがでしょうか。(もん)