ぷれす通信

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読んだら書きたくなりました vol.23

『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」』

児玉博 文春新書

村瀬二郎。日本人の血をひくアメリカ国籍の少年は、芦屋の地で戦艦大和に乗ることを夢見ながら、防空壕の前で「母国」のB29爆撃機を握りこぶしとともに睨みつけます。そんな村瀬は戦後、アメリカで弁護士となり、日本のバブル期に起こった日米貿易摩擦など、数多くの国際問題にある種フィクサー的な活躍をみせることになります。その立ち位置から、村瀬二郎の名は巷間知れ渡ってはいません。しかし、こうした人物がいてこそ、とんでもない事態になっていたかもしれない危機の回避がなされたのです。一人の伝記であるとともに、日本とアメリカを舞台にしたエピソードは、小説にも似たスピード感で「新書?」というほどの一気読みを可能にします。バランス感覚に優れたその眼力で生き抜くさまは、ドラマや映画化されても何ら不思議のない人物。今のうちから村瀬二郎の視点を知って、改めて今の国際情勢を考えてみてはいかがでしょうか。(かつ)

『日本史は逆から学べ』

河合敦 光文社知恵の森文庫

前から、日本史は現在から過去に遡る学び方のほうがよいのでは?と考えていました。いきなり旧石器時代の日本人のことを教わっても、もうフィクション……って思ってしまいます。なので、とても期待して手に取りました。今につながる近現代から始まるのでイメージしやすいし、「なぜ」それが起こったのか?という問いで遡っていく形式ゆえに、「答え」を知りたくてページは進み、気づいたら江戸を室町を平安をと、すらすらと日本史の流れを学ぶことができました。とはいえ、いかに遡って教えることが難しいか、ということも読んでいて痛感しました。著者の筆の運びや仕掛けの腕力あってこそ成り立つ一冊なのです。日本史を学び直そうという方、逆からですよ!(まち)