ぷれす通信

communication

2011年6月号

デッドゾーン 作品世界を生かす

最近、ある版元から「特に間違えているわけでもないのに、エンピツとはいえ著者特有の表現を他の表現にする提案をしている箇所が多く、ベテランの先生にそのままお渡しできないゲラがあった」という注意がありました。ゲラの控えを確認したところ、著者が好む送り仮名の省略や、テンポよく運ぶために短く削ぎ落とした文章に、エンピツを入れて補ってありました。

「最初の読者」として誤りを正し、読みやすく、わかりやすいように書き込みを入れるのは重要なことです。しかし、著者や対象とする読者などを考慮し、時には指摘を控え目にして、作品の世界観や全文章を手直ししたくなったときはちょっと立ち止まって、「本当に直さなきゃだめ?」と心の中でつぶやいてみてはどうでしょう? 直さなくても差し支えないものはなるべく直さない。多少文がこなれていなくても、意味がつかめれば必要以上に整えない。これは「本当にこのままでいいの?」という問いも孕んでいます。どちらを選択するか、難しいところです。

文章を整えることに懸命なあまり、著者の意図よりも自らの考えを優先してしまう危うさも、校正者の「デッドゾーン」の一つです。

 正解のない問題ですが、私たちの迷いや勇み足で作品世界を危うくすることがないよう、心を配りたいものです。(S)

〈ぷれす〉編集・校正の本が発売! 『こども大図鑑 地球』

〈ぷれす〉編集・校正の本が発売! 『こども大図鑑 地球』

『こども大図鑑 地球』

こども大図鑑 地球

ジョン・ウッドワード 著

河出書房新社(2011/5)

128ページ/B4変判

ISBN 978-4-309-61552-3

2,480円(税込)