ぷれす通信

communication

2012年4月号

デッドゾーン 震度とマグニチュード

東日本大震災から1年が過ぎました。一時期より減ったとはいえ、地震関連報道は止むことがありません。

 

ニュースや天気予報で「震度」「マグニチュード」の用語が使用されていますが、その違い、わかりますか?

 

「震度」とは、ある場所で観測される地震の揺れの強弱をいくつかの階級で表したもの、だそうです。震度は震度計で観測します。

 

日本では、気象庁の震度階級が使用されています。1996年から、それまでの「人体感覚」や「被害の程度」から判定していたのを「計測震度」を用いて判定するよう変更されました。気象庁の震度階級は、0・1・2・3・4・5弱・5強・6弱・6強・7の全10階級に分かれています。

 

次に「マグニチュード」ですが、地震のエネルギーからその大きさを測る尺度、だそうです。地震計に記録された地震波の振幅と震源との距離から計算をします。

 

マグニチュードは「M」の記号で表し、日本では、気象庁マグニチュードが使用されています。

 

・M1未満

・M1以上、M3未満

・M3以上、M5未満

・M5以上、M7未満

・M7以上

 

の全5階級に分かれていて、それぞれ漢字名もついています。M1未満から順に、極微小地震・微小地震・小地震・中地震・大地震となっています。

 

3・11当日、皆さんはどこにいましたか? 一日も早い復興をお祈りするとともに、校正者として、日々の仕事を通して確実な情報を伝える手助けを行いたいものです。(S)

この一冊!『人名用漢字の戦後史』

この一冊!『人名用漢字の戦後史』

『人名用漢字の戦後史』

人名用漢字の戦後史

円満字二郎 著

岩波新書(2005/7)

236ページ/新書判

ISBN 4-00-430957-3 C0281

740円(税抜)


この本はこわい本です。語り口は平易で穏やか、丁寧に歴史を追っている箇所は少々まだるっこしいくらいですが、戸籍法の改正から始まる人名用漢字の歴史、その誕生から今日に至るまでの数度の改訂のなかから透けてくる、漢字のある側面を暴いてしまっているのです。

 

もともとその名の通り「人名用」漢字ですから、事は名付けの現場から起きています。我が子にある特定の漢字で名付けをしたい、我が実家の場合ですと、妹を「遙」と名付けたかったのですが、リストに字がないために「春佳」となりました。そういう例の積み重ねの上に、なお当用漢字の制限の尊重という考えがあったり、戸籍実務家からは漢字を増やすよう要望が出されたりと、「制限する」「しない」で丁々発止の議論を何度も経て今日の人名用漢字があります。

 

著者が繰り返し口にするのは漢字の「唯一無二性」です。「岩崎」の崎の「大」が「立」、「吉野」の吉の棒の長さ、たとえそれが誤りとされても、それこそが我が名なのだと、かえのきかない表記としてこだわりがあることでしょう。それが「唯一無二性」です。異体字を包摂しないことが漢字の「無限性」を生み、どんどん漢字が増えていく。また、コンピュータの能力向上を受けて使える漢字が増えたことで漢字制限が緩み、漢字の意味も知らないのに「見慣れた」字が増えていく。結果、「常用平易」な漢字が増えていき、現代という「個性の時代」において、だからこそ親は「常用平易」ではない漢字を求め、あるいは漢字を当て字・万葉仮名的に使用して変わった名付けをする……。

 

漢字の「唯一無二性」には、名付けに限らず社会の流れにも深く関わっています。今、戦時中や政治の混乱期に見られたような、空疎かつ扇情的な使われ方とよく似た、今の当て字的名付けに見るような、意味が抜け落ちた「抜け殻」「唯一無二性」のお化けとしての漢字表現が出現し始めています。この先の(人名用)漢字の変遷、人間あるいは社会と漢字との闘いをウォッチするのも一興と言えるでしょう。