ぷれす通信

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2012年7月号

デッドゾーン 勘違いいろいろ

「気骨が折れる」――さて、最初の二文字、何と読むでしょう――うっかり「きこつ」と読んだ人はいませんか? 正解は「きぼね」。「きぼね」は気遣い、気苦労の意です。「気骨」を「きこつ」と読んだときの意味は、困難や障害に屈せず信念を最後まで貫き通す強い心、です。この意味で使用する場合は「気骨のある人」のように使います。読み方が変われば意味も変わる好例ですね。

 

今号は西谷裕子編『勘違いことばの辞典』(東京堂出版)新しいウィンドウから。前掲のような例以外にも、慣用表現の間違いや意味・ニュアンスの取り違えなどいろいろな例が載っています。

 

×今年は台風の当たり年だ

○今年はみかんの当たり年だ

 

×アルバイトばかりして学業がおざなりになる

○アルバイトばかりして学業がなおざりになる

 

×蘊蓄をひけらかす

○蘊蓄を傾ける

 

×油断して足元をすくわれる

○油断して足をすくわれる

 

×雨脚が止む

○雨が止む

 

――いかがでしたか?

 

ことばの使い方や慣用表現など、正しく覚えているつもりで実は思い違いをしていることって意外と多いものです。校正では、知らなかったでは済まされないこともあります。

 

仕事の合間や余暇を利用して、ことばに関する辞典や漢字検定の問題集などをチェックしておきましょう。「これは」という文献や資料をご存じでしたら、ぜひ〈ぷれす〉までお知らせくださいね。(S)

この一冊!『地名の謎』

この一冊!『地名の謎』

『地名の謎』

地名の謎

今尾 恵介 著

ちくま文庫(2011/7)

272ページ/文庫判

ISBN 978-4-480-42832-5

714円(税込)


本書は日本全国津々浦々の地名を取り上げ、地名から垣間見る地域の歴史や名称にまつわるエピソードなどを軽妙な語り口でユーモアたっぷりに紹介しています。

 

地名にはいろいろな種類があり、自然地名、古代地名、合成地名に瑞祥地名、「詐欺地名」に「渡来人地名」(最後の二つは正式なものではなく著者独自の名称のようです)……それらの名称を眺めているだけでも楽しくなってきます。

 

渡来人地名の例として、埼玉県志木市・新座市が挙げられていました。志木は武蔵国新座郡志楽(しらぎ)で、この新座郡も昔は新羅郡だったそうです。関東では埼玉県の西部に渡来人の村が多かったそうで、西武線の高麗駅やJR八高線・川越線の高麗川駅、日高市の高麗本郷も紹介されていました。

 

校正者が関与したばっかりに(?)生まれてしまった地名も紹介されています。アラスカの西の端近くに「Nome(ノーム)」という町があるそうですが、地図の校正刷りで町名が入っていなかったのを校正者が発見し、「地名を入れよ!」の意味で「Name」と記入したところ、それが誤って「Nome」と印刷され、地名になってしまったという……心しておきたい事例ですね。

 

そのほか、市町村合併で急増している「かな書き地名」や「東西南北地名」なども取り上げています。横浜市青葉区(あかね台、あざみ野、さつきが丘、しらとり台…計12町名)と埼玉県さいたま市の旧浦和市域の駅名(東浦和駅、西浦和駅、南浦和駅、北浦和駅の東西南北+中浦和駅、武蔵浦和駅、浦和駅)が実際の例として紹介されています。

 

それにしてもなぜひらがなの地名が増えたのか、なぜ東西南北が好まれるのか? その理由もしっかり紹介されています。「ブランド地名」への憧れや「当用漢字」による漢字制限、「和を以て貴しとなす」日本人の精神……読みながら膝を叩くこと請け合いです。

 

本書を手がかりにお住まいの地名の歴史をたどってみるもよし、話のネタ本にするもよし。さあ、買った買った!