ぷれす通信

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読んだら書きたくなりました vol.38

『武将列伝―松本清張ジャンル別作品集①』

松本清張 双葉文庫

各出版社に発表した松本清張の様々な短編を、ジャンル別にまとめて編集したとても親切な文庫。シリーズ第一弾です。いまも多くの作品の舞台となる戦国時代。取るか取られるかという、油断も隙も許されない時代において、何を考え、どう振る舞い、いかにして生き残り、なぜ滅んでいったのか。それを松本清張が書いているのだから、面白くないわけがない。織田家重臣の丹羽長秀を描いた「腹中の敵」では、下っ端に過ぎなかった秀吉の躍進と、ついに訪れる立場の逆転という、武将としての苦しい心境を壮絶な最期で結びます。ほか、家康の家臣として、秀吉に探りを入れていくうちに、やがて寝返ってしまった石川数正の胸中と境遇をあらわした「群疑」、鉄砲の名手であるがゆえの境地を暴いた「特技」など、全10編。どの作品も人間の心のうちがこまやかに描かれていて、短編ながら読み応え十分です。(くろ)

『図解なんかへんな生きもの』

ぬまがさワタリ 光文社

本書は、ニワトリやハトなど身近な生きものから、アオミノウミウシやメガマウスなど一般的にはほぼ無名の生きものまで多彩なラインナップの生きものを紹介している生きもの本です。どのページも、その生態やエピソードが満載で「へ~」と知的好奇心が満たされます。……満たされるのです、がしかしこの本の魅力はそこだけにあるのではなく、著者のぬまがささんの生きものへの視点、ツッコミや解説にこそあるのです。カワセミをカワセミ様と崇拝し、「ヒグマのほうも人間のような得体のしれない二足歩行のキモイ生物とは関わりたくないだろう」などの生きものよりの人間観を展開、かなり厳しい弱肉強食な生態をかわいいイラストで解説しているところは逆にシュール、映画やマンガのパロディもそこかしこに散りばめられていて、クスッとしたりニヤリとしたり、読んでいて全く飽きません。ぜひみなさんもぬまがさワールドを堪能してみてください。(もん)